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夏のあの日を乗り越えるとき

2016/07/31 23:54:38 | ◆一度別れる前のPさんとの日々 | コメント:0件

その道のりも、その山深さも、宿の佇まいも、お香のかおりも、土の壁も、とめどなく流れるお湯の音も…
その向こうにいるのが、貴方であることが、不思議だった。
「なんか…不思議…」
何度、口に出してそうつぶやいたか、わからない。
私がそうつぶやくたびに、
「そう?」
貴方がいつもどおりのトーンで言ってくれるのが、本当に嬉しかった。




夜勤明け、温泉であたたまって、お酒が入って、ご馳走でおなか一杯で…
泥のように眠って、ふと目が覚めた時には、もう日付が変わっていた。

ひとりでお布団から抜け出して…
窓辺に座って、写真立ての前でお線香に火をつけて…
『今日』の意味を考える。
15年前の『今日』の意味を考える。
あの日があったから、私はこうなってしまった。
でも、あの日があったからこそ、私は命を迎える者になることができた。

お線香の煙が揺らぐ先に、貴方の寝顔を確認して…
この場に貴方と来ていることの意味を考える。
貴方とこの場を共有することで、ここを『13年間を象徴する場』ではなくする。
自分で自分にかけていた最後の呪縛を、解いていく。


『今日』『この場』に貴方と来ていること。
『今日』『この場』から歩き出すこと。





20160731.jpg
朝になって…
13年間見続けた景色の中に貴方がいることを、すごく自然なこととして感じている自分がいた。
入れ替わりのように、貴方がつぶやく。
「不思議だな…」
少し笑って、私は聞き返す。
「何が?」
ちょっとだけ困った顔をして
「僕が、ここにいることが」
そう答える貴方。
「一緒に来てくれて、ありがとう」
この場に来て何度も口にした言葉を、もう一度、私は貴方に向ける。






『この日』に、『この場』から歩き出す。
15年前の夏のあの日を、『この日』に『この場』で、乗り越える。

来られて、良かった。
もう、立ち止まったりしない。





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