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硝子のカフスボタン【過去記事】

2007/01/23 23:08:39 | 過去記事 | コメント:-件

※本記事は、初代『妙子の愛人生活』からの、復活記事です。


Aさんの出張にくっついて来ています。
朝、Aさんと一緒に起きて、Aさんの身支度のお手伝いと朝食の準備をして、Aさんをお見送りした後は…
二度寝をして、こうしてのんびりすごしたり…
一人で観光をしに出たりします。


夜、お仕事と会食を終えたAさんとバーで待ち合わせ。
「お疲れ様です、いかがでしたか、例のお話」
「いや、どうにもこうにも…あのタヌキオヤジが(笑)」
「どちらかといえば、Aさんがタヌキ、××さんがキツネ、というイメージですが(笑)それで、化かし合いはどちらの勝ち?」
「化かし合いか(笑)それがな…」
Aさんの話したいようにして差し上げて、私はしばらく聞き役にまわり、
「で、妙子は一日、何してた?」
と、Aさんがこちらに向き直ってくださるのを待ちます。

「こんなものを見つけてきたんです」
私が差し出した包みを、いそいそと開くAさん。
「硝子のカフスボタン。高いものではないのですが、せっかくですから(笑)」
「ああ、硝子の町だもんなぁ」
Aさんは、カフスボタンをライトで透かして見ながら、浅く笑います。
「どうだ、うまいものは見つかったか?」
「もう、私だっていつも美味しいものばかり探しているわけではないですよ!ちゃんと歴史資料館にも行ったし…」
「それで、そこのカフェのケーキが美味しかった、とかいう話になるんだろう?(笑)」
「なんでお分かりになるんですか(笑)」

他愛のないおはなし。
東京で履くようなブーツのまま行ってしまったから、氷で滑ったとか。
一人旅を甘く見られて、ナンパされたこととか。
立ち食い海鮮屋さんを遠巻きに見ていたら、お店のお兄さんに呼び込まれて、焼きサザエを割引してもらえたこととか。
「いいなぁ」
私の話を聞きながら、それまでご自分がつけていたカフスボタンを外し、硝子のカフスボタンと付け替えたAさん。
「俺も行きたかったなぁ」
独り言のようにつぶやきながら、カフスボタンをもう一度カウンターの灯りに当ててご覧になります。
「行きましょうよ、いつか、一緒に」
「そうだなぁ、俺もサザエ食べたいし」
「そこですか??(笑)」



私が買ってきたカフスボタンは、きっと東京までたどり着くことなく、そっとこの土地に置いて行かれるのでしょう。
Aさんは、私がこの北の国で硝子のカフスボタンを買ったことなんて、いつか忘れてしまうのかもしれません。

でも、そんなことは問題ではなくて…

忙しいお仕事の旅に、私を伴って下さったこと。
スーツに合いもしない、安物のカフスボタンを、バーにいる間の一時だけでも身につけてくださった、Aさんの想い。
一緒に行きましょう、の言葉に、そうだな、と返して下さった、Aさんのお気持ち。
それだけで、私は十分。


一見、嘆きの種になりそうなものが多い関係だけれど…
その分、男性側の隠れた想いが浮き彫りになる。
それだけで、私は十分。




どうせ、置いて行かれるカフスボタンだって、Aさんのお手当てで買ったものだし。
…なんていう強がりくらいは言わせていただきますが(笑)







8年後の2015年、この記事を振り返ってみて…





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